「あと5分だよ」と言ったのに、5分後にはやっぱり大泣き。公園から帰るのも、ゲームをやめるのも、お風呂に入るのも、毎回ひと苦労。「どうしてうちの子だけ、こんなに切り替えられないんだろう」——夜、子どもが寝たあとにそんなことを考えている方に読んでいただきたい記事です。
結論からお伝えすると、切り替えの苦手さは「予告の入れ方」を変えるだけで、かなりラクになります。この記事では、私が発達支援の現場で実際に使ってきた予告の5パターンを、声かけの具体例つきでご紹介します。
なぜ切り替えが苦手なの?「わがまま」ではない理由

切り替えが苦手なお子さんは、決してわがままなわけでも、親の言うことを聞く気がないわけでもありません。背景には、いくつかの特性の可能性があります。
「今」に没入する力が強い
集中力が高いお子さんほど、目の前のことに深く入り込みます。大人でいえば、映画のクライマックスで急に肩を叩かれるようなもの。「やめなさい」という声は、耳に届いていても、意識までは届いていないことがあります。
先の見通しを立てるのが苦手
「あと5分」と言われても、5分がどれくらいの長さなのか、そのあと何が起きるのかがイメージしづらいお子さんがいます。見通しが立たないまま急に終わりが来ると、それは本人にとって「予告なしの中断」です。混乱して当然なのです。
切り替えそのものにエネルギーがいる
楽しいことから離れる、というのは誰にとってもエネルギーの要る行為です。特性のあるお子さんは、その切り替えに使うエネルギーがより大きい傾向があります。一日の終わりで疲れている夕方に癇癪が増えるのは、そのためです。
ですから、切り替えられないのは、あなたの関わり方が悪いからではありません。お子さんの脳の使い方の特徴に、まだ声かけの形が合っていないだけです。合わせ方は、これから変えられます。
「これは年齢的なものなのか、特性なのか」が気になる方は、発達グレーゾーンとは|診断がつかない子の特徴と支援の受け方もあわせてお読みください。
今日からできる「予告」の入れ方5パターン

ここからが本題です。5つすべてを使う必要はありません。お子さんに合いそうなものを、ひとつ試してみてください。
パターン1:時間ではなく「回数」で伝える
「あと5分」は、時間の感覚がまだ育っていないお子さんには伝わりにくい表現です。数えられる単位に置き換えます。
❌ NG例:「あと5分でおしまいね」
⭕ OK例:「あと3回すべったら帰ろうか」
ブランコなら「あと10回こいだら」、絵本なら「あと1冊読んだら」。本人が自分で数えられる形にすると、終わりが自分のコントロール下に入ります。
パターン2:予告を2回に分ける
1回の予告だけでは、没入しているお子さんの意識に届かないことがあります。少し早めに1回目、直前に2回目を入れます。
❌ NG例:(帰る直前に)「はい、帰るよ」
⭕ OK例:(10分前)「そろそろ帰る時間が近づいてきたよ」→(3分前)「あと1回すべったら、靴を履こうね」
1回目は「心の準備」、2回目は「行動の合図」です。役割が違うので、両方あると効きます。
パターン3:終わりではなく「次」を予告する
「終わり」は喪失の言葉です。同じ場面でも、次に向かう言葉に変えると、受け取り方が変わります。
❌ NG例:「もう遊ぶのおしまい」
⭕ OK例:「次は、おうちでおやつの時間だよ」
切り替えの先に楽しみがあると、離れるためのエネルギーが少なくて済みます。おやつでなくても、「帰ったらパパにすべり台の話をしよう」でも構いません。
パターン4:目に見える形にする
耳から入る言葉より、目で見える情報のほうが入りやすいお子さんは多くいます。
❌ NG例:「時計の長い針が6になったらね」(時計が読めない場合)
⭕ OK例:キッチンタイマーを子どもに持たせて「これが鳴ったら帰ろう」
タイマーが鳴ることで、「ママが終わらせた」ではなく「時間が来た」に変わります。親子の対立が減るのが、この方法の一番の効果かもしれません。
パターン5:本人に決めてもらう
切り替えの苦しさには、「自分で決められない」というもどかしさも含まれています。選択肢を渡すと、それが和らぎます。
❌ NG例:「今すぐ帰るよ」
⭕ OK例:「あと2回すべる?それともブランコに1回乗って帰る?どっちにする?」
どちらを選んでも「帰る」に着地する二択にするのがコツです。決定権を渡しているようで、目的地は変わっていません。
なお、予告をしても最終的に癇癪になってしまうことはあります。そのときの対応については4歳の癇癪がひどいのは「普通」?それとも特性?で詳しくご紹介しています。
それでも切り替えられないとき・相談の目安
5パターンを試しても、うまくいかない日はあります。それは失敗ではなく、その日のお子さんのコンディションの問題であることがほとんどです。
園や学校に伝えてみる
家庭で効いた方法は、園でも使えることがあります。「タイマーを使うと切り替えやすいようです」と先生にお伝えするだけで、集団生活での困りごとが減ることがあります。伝え方に迷うときは、「家でこうしたら少しうまくいったので、参考までに」という形が、いちばん角が立ちません。
相談先の選択肢
- 市区町村の子育て支援窓口・保健センター:診断がなくても相談できます。まずはここが入口です。
- 発達支援センター・児童発達支援事業所:自治体によって名称が異なります。窓口は市区町村です。
- 園・学校の先生、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー:日中の様子を知っている立場からの視点がもらえます。
相談を考えたい目安
次のような状態が続いているときは、一度どこかに相談してみてよいタイミングです。
- 切り替えの困難が、園や学校での生活に影響している
- 癇癪の時間が長く、親子ともに消耗している
- お子さん自身が「できない自分」に落ち込む様子がある
スクールソーシャルワーカーとして学校に入っていると、「予告が効くお子さんかどうか」は、家庭と学校で情報を共有するだけで見えてくることがよくあります。どちらか一方だけで抱えるより、二か所で同じ方法を試すほうが、答えが早く見つかります。相談は「困り果ててから」でなくて大丈夫です。
まとめ
- 切り替えの苦手さは、わがままではなく「見通しの立てにくさ」から来ている可能性があります
- 予告は、回数化・2段階・次の予告・視覚化・二択の5パターンから、合うものをひとつ試せば十分です
- 家庭で効いた方法を園や学校と共有すると、集団生活での困りごとも減っていきます
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この記事を書いた人
波多江 文永(はたえ あい)※活動ネーム
精神保健福祉士・特別支援教育士・スクールソーシャルワーカー。学校現場と発達支援の両方から、「診断がつかないけれど育てにくい」お子さんと親御さんをサポートしています。
この記事の内容を、わが子のケースで一緒に考えませんか
今回ご紹介した5パターンのうち、どれがお子さんに合うかは、実際の場面を細かく見ないとわからないことがあります。「うちの子はタイマーだと余計に焦る」「二択にしたら3つ目の選択肢を出してきた」——そんな“わが子だけの事情”を持ち寄って一緒に考える場が、オンラインサロン「発達凸凹子育て実践ラボ」です。
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