「小学校では、うちの子のこと、ちゃんと分かってもらえるだろうか」——年長さんの秋、そんな不安がふっと湧いてきませんか。園では見てもらえていたことが、担任の変わる小学校でも伝わるのか。この記事では、就学に向けて誰に・いつ・何を伝えるかを整理し、園や学校、教育委員会それぞれへの伝え方を文例つきでお伝えします。伝えることは、レッテルを貼ることではありません。
園から小学校へは、何がどう伝わるのか
まず知っておきたいのが、園から小学校へは書類で情報が引き継がれる仕組みがあるということです。保育園なら「保育所児童保育要録」、幼稚園なら「幼稚園幼児指導要録」と呼ばれます。年長クラスの担任が作成し、入学する小学校に送られます。
ここには子どもの育ちの様子や発達の状況、そして特に知らせておきたい留意事項が記載されます。つまり、園の先生が把握していることは、小学校へ届く可能性があるということです。
ただし、これは保護者が書くものではありません。だからこそ、園の先生に伝えておくことが、間接的に小学校への引き継ぎにつながります。家庭でしか見えていない姿は、伝えなければ要録には載りません。
もうひとつ、自治体によっては保護者が記入する「就学支援シート」のような仕組みが用意されていることがあります。名称も様式も地域によって異なり、ない自治体もあります。あるかどうかは、お住まいの市区町村の教育委員会や就学相談の窓口で確認できます。
私はスクールソーシャルワーカーとして就学の前後を数多く見てきましたが、4月に担任が「聞いていません」となる場面が、いちばんもったいないと感じます。書類はあっても、細かなニュアンスまでは伝わりきらないことがあるからです。だから、伝える機会は一度きりにしないほうが安心です。
園から小学校へ、情報はこう伝わる
ルートは1本ではありません。組み合わせて使えます
① 要録
園の先生が作成し
小学校へ送付
保護者は書けないが
園に伝えた内容が
反映されることがある
② 就学支援シート
保護者が記入する
自治体の仕組み
名称も有無も地域差あり
教育委員会に確認を
③ 保護者から直接
就学相談/学校見学/
入学後のメモ
ニュアンスまで
いちばん伝わりやすい
※ 書類だけでは細かなニュアンスが伝わりきらないことも。伝える機会は一度きりにしないと安心です
園の先生への伝え方|要録に反映してもらうために
要録が作成されるのは年度末ですが、伝えるのは早いほうがいいです。秋のうちから、日常の会話に混ぜておく感覚で大丈夫です。
伝えるときの3つのコツ
ポイントは、お願いではなく情報共有として伝えることと、困りごととうまくいく工夫をセットにすることです。
NG例:「小学校に、ちゃんと伝えておいてください」(要求として受け取られやすい)
OK例:「就学に向けて、家庭での様子もお伝えしておきたくて。切り替えが苦手なのですが、予告があると動きやすいです。園ではいかがですか?」
「園ではいかがですか」と聞き返すのが大切です。家庭と園の姿をすり合わせることで、先生の中の理解が立体的になります。
年長の秋に伝えておきたいこと
具体的には、この4点が伝わっていると引き継ぎが手厚くなります。苦手な場面(いつ・どこで・どのくらい)/落ち着く声かけや工夫/得意なこと・好きなこと/相談中の機関があればその状況。
得意なことを入れるのを忘れないでください。困りごとだけが伝わると、小学校側の第一印象が「大変な子」から始まってしまいます。
就学相談・小学校への伝え方(文例つき)
就学相談の場や、入学前後の学校とのやりとりで使える文例を、場面別に紹介します。そのまま使っても、言葉を変えても大丈夫です。
1. 就学相談を申し込むとき
電話や窓口で最初に伝える内容です。診断の有無より、困っている場面を具体的に。
「年長の◯◯と申します。就学相談についてうかがいたいです。診断は受けていませんが、切り替えや集団での指示が入りにくい場面があり、入学後の環境について相談したいと思っています。まず何から進めればよいでしょうか」
2. 学校見学・面談のとき
お願いを並べるより、様子を伝えて相談する形が伝わりやすいです。
NG例:「席は前のほうにしてもらえますか」(要求から入る)
OK例:「音や視覚の刺激が多いと集中しづらいところがあります。園では前のほうの席で落ち着いていました。学校ではどんな配慮が可能でしょうか」
3. 入学後、担任の先生に改めて伝えるとき
要録は届いていても、担任が細部まで把握しているとは限りません。4月の早い時期に、短いメモを渡すのが有効です。
「就学前から相談してきた内容を、簡単にまとめました。お手すきのときにご覧ください。何かあればいつでもご連絡ください」——A4一枚に、苦手な場面・有効な声かけ・得意なこと・相談機関の4項目で十分です。
4. 年度替わりの引き継ぎをお願いするとき
担任が変わる3月末は、情報が途切れやすいタイミングです。
「一年間ありがとうございました。来年度の先生にも、今年うまくいっていた関わり方を引き継いでいただけると助かります」と伝えておくと、学校内での共有が進みやすくなります。
なお、就学相談の申し込み時期や進め方は自治体によって差があります。多くの地域で年長の春から秋にかけて動き始めるため、迷っている段階でも早めに市区町村の教育委員会や就学相談の窓口に問い合わせておくと安心です。

よくある質問
Q. 診断がないのに伝えてもいいのでしょうか?
A. 大丈夫です。伝えるのは診断名ではなく「困っている場面」です。診断がなくても、配慮や相談の対象になります。
Q. 伝えることで、色眼鏡で見られませんか?
A. 心配になるお気持ちは自然です。ただ、伝えないまま4月を迎えると、先生が状況を理解できないまま対応することになり、子どもがつらい思いをすることがあります。得意なことも一緒に伝えると、偏った印象になりにくくなります。
Q. 要録に何が書かれたか、見せてもらえますか?
A. 要録は園が作成し学校へ送る書類で、原則として保護者に開示されるものではありません。気になる場合は、園の先生に「どんなふうに伝わりますか」と口頭で確認してみてください。
Q. 就学支援シートが自分の地域にあるか分かりません。
A. 名称や有無は自治体によって異なります。市区町村の教育委員会や就学相談の窓口、または園の先生に聞くと教えてもらえます。
まとめ
- 園から小学校へは要録という形で情報が引き継がれます。園の先生に伝えておくことが、間接的に学校へつながります。
- 伝えるときは「お願い」ではなく「情報共有」。困りごとと工夫、そして得意なことをセットで。
- 就学相談の申し込み、学校見学、入学後、年度替わり——伝える機会は一度きりにしないほうが安心です。
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この記事を書いた人
波多江 文永(はたえ あい)※活動ネーム
精神保健福祉士・特別支援教育士・スクールソーシャルワーカー。学校現場と発達支援の両方から、「診断がつかないけれど育てにくい」お子さんと親御さんをサポートしています。
「うちの子の場合、どう書いて伝える?」を
一緒に考えませんか。
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