「その服じゃなきゃ絶対に嫌」「いつもの道じゃないと大泣き」——こだわりに毎日つき合っていると、どこまで合わせていいのか分からなくなりますよね。実は、こだわりはやめさせようとするほど強くなることがあります。この記事では、こだわりが起きる背景と、正面からぶつからずに「ずらす」関わり方を、具体的な声かけとあわせてお伝えします。
こだわりが強いのはなぜ?|安心を守るための行動
こだわりは、わがままでも親の甘やかしでもありません。多くの場合、先の見通しが立ちにくい世界のなかで、自分なりに安心を確保しようとしている行動です。
いつもの服、いつもの順番、いつもの道。これらが「同じ」であることは、その子にとって予測できる安全な枠組みになります。だから変更されると、単に不満なのではなく、足場が崩れるような不安を感じることがあるのです。
ここを押さえると、対応の方向が変わります。こだわりを力ずくで壊すことは、安心の土台を取り上げることになりかねません。だから「やめさせる」を目標にすると、子どもは必死に守ろうとして、かえって強まってしまいます。
そしてもうひとつ。うまくいかない日が続いても、あなたの育て方が原因ではありません。特性のある子のこだわりは、関わり方の巧拙で簡単に消えるものではないからです。
私はスクールソーシャルワーカーとして、「無理にやめさせるのをやめた」ご家庭ほど、結果的にこだわりがゆるんでいく場面を何度も見てきました。急がば回れ、が本当に効く領域です。

やめさせるより「ずらす」3つの関わり方
目指すのは、こだわりをなくすことではなく、こだわりの幅を少しずつ広げることです。今日から試せる3つを紹介します。
1. 「同じ」を保ちながら中身を少しだけ変える
全部を変えようとせず、枠組みは残して一部だけずらします。急に別のものにするのではなく、「ほぼ同じだけど少し違う」を積み重ねるイメージです。
NG例:「もうその服は小さいでしょ。今日はこっちにしなさい」
OK例:「同じ青のTシャツだよ。こっちは星がついてる方ね」
色や形など、その子が大事にしている要素を1つ残すと、受け入れやすくなります。
2. 変更は「予告」とセットにする
こだわりが強い子にとって、突然の変更はもっとも苦手な場面です。変えること自体より、知らされていなかったことがつらいのです。
NG例:(出発直前に)「今日は違う道で行くよ」
OK例:「明日は工事で、いつもの道が通れないんだ。だから公園の前を通る道で行くね」
前日や朝のうちに伝え、可能なら絵や地図で見せると、さらに安心につながります。
3. 選択肢を2つにして「決める力」を渡す
こだわりの背景には「自分で決めたい」という気持ちがあることもあります。こちらが全部決めるのではなく、選ぶ余地を残しましょう。
NG例:「今日はこれで行くって決めたでしょ」
OK例:「赤い靴と青い靴、どっちにする?」
どちらを選んでも問題ない2択にするのがコツです。選択肢が多すぎると、かえって決められなくなります。
どこまで合わせる?線引きの考え方
「合わせすぎるとエスカレートするのでは」という不安はよく聞きます。ここで役立つのが、こだわりを3つに分けて考える方法です。
まず、合わせて問題ないこだわり。服の順番、座る場所、使うコップなど、周囲に迷惑がかからず本人が安心できるものは、合わせて大丈夫です。むしろ安心が保たれることで、他の場面で融通がききやすくなります。
次に、少しずつ広げたいこだわり。決まったものしか食べない、同じ道しか通れないなど、生活の幅を狭めるものです。ここは前章の「ずらす」を、時間をかけて試していきます。
そして、譲れないこだわり。危険なこと、他人を傷つけること、健康を損なうことは、こだわりであっても止める必要があります。このときも叱責ではなく、「これは危ないからできない。かわりにこれならいいよ」と代わりを示すのが基本です。
大切なのは、すべてに同じ強さで向き合わないことです。親のエネルギーには限りがあります。全部を正そうとすると、先に倒れてしまいます。
園や学校でも困りごとが出ている場合は、家庭だけで抱えず共有してください。対応がそろうと、子どもは混乱しにくくなります。相談先に迷うときは、市区町村の子育て・発達相談の窓口が入口になります。
こだわりを3つに分けて考える
全部に同じ強さで向き合わなくて大丈夫です
合わせてOK
服の順番/座る場所/
使うコップ など
安心が保たれると
他の場面で融通がきく
少しずつ広げたい
決まったものしか食べない/
同じ道しか通れない
「ずらす」を
時間をかけて試す
譲れない
危険なこと/人を傷つける/
健康を損なうこと
叱るのではなく
代わりを示す
※ 親のエネルギーには限りがあります。全部を正そうとしなくていいんです
よくある質問
Q. こだわりは成長すると消えますか?
A. 個人差が大きく、形を変えながら続くこともあります。年齢とともに「折り合いをつける力」が育ち、生活に支障が出にくくなることは多くあります。
Q. 合わせてばかりだと将来困りませんか?
A. 安心が満たされることで、かえって変化を受け入れやすくなることがあります。合わせる場面と広げる場面を分けて考えると、バランスが取りやすくなります。
Q. こだわりが強いのは発達障害ですか?
A. こだわりの強さだけで判断はできません。気になる場合は、市区町村の相談窓口や医療機関で相談してみてください。
Q. きょうだいに「ずるい」と言われます。
A. 「この子はこれが苦手だから、ここは手伝っている」と理由を短く伝えると納得しやすくなります。あわせて、きょうだいにも個別の時間をつくれると安心につながります。
まとめ
- こだわりは安心を守るための行動。やめさせようとするほど強くなることがあります。
- 「枠は残して中身を少しずらす」「変更は予告とセット」「2択で決める力を渡す」の3つから試してみてください。
- 合わせてよいもの・広げたいもの・譲れないものに分けると、全部に力を注がずに済みます。
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この記事を書いた人
波多江 文永(はたえ あい)※活動ネーム
精神保健福祉士・特別支援教育士・スクールソーシャルワーカー。学校現場と発達支援の両方から、「診断がつかないけれど育てにくい」お子さんと親御さんをサポートしています。
「うちの子のこのこだわり、どうする?」を
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