「怒りたくないのに、今日もまた怒ってしまった」——関わり方を変えたいと思っても、何をどう変えればいいのか分からない。そんなときに知ってほしいのが「ペアレントトレーニング」です。この記事では、ペアトレとは何か、どんな効果が期待できるのか、そして家庭で今日から試せる基本のステップまでをお伝えします。特別な準備がなくても、小さく始めて大丈夫です。
ペアレントトレーニングとは|「親を叱る」ものではありません
ペアレントトレーニング(ペアトレ)は、子どもの行動の仕組みを学び、関わり方を具体的に練習していくプログラムです。発達に特性のある子の子育てを中心に、医療機関や自治体、支援機関などで広く行われています。
名前に「トレーニング」とつくので、「親のやり方を直される場」と身構える方が多いのですが、実際は逆です。目指すのは、親が今より少しラクになり、子どもとの良い時間が増えること。うまくいかない原因を親の性格や愛情に求めるのではなく、「どんな場面で・どんな声かけをすると・どう変わるか」という仕組みの部分を扱います。
ペアトレの土台にあるのは、「叱って減らす」より「できたことに注目して増やす」という考え方です。困った行動をなくそうとするほど、親も子も苦しくなります。そうではなく、望ましい行動が起きたときにすかさず注目する。この積み重ねが、結果的に困った行動を減らしていきます。
私はスクールソーシャルワーカーとして、ペアトレを学んだ親御さんが「子どものできている部分が見えるようになった」と話す場面を何度も見てきました。子どもが変わる前に、まず親の見え方が変わる。それがこのプログラムの大きな価値だと感じています。

家庭でできる基本の3ステップ
本格的なプログラムに参加しなくても、考え方の一部は今日から試せます。完璧にやろうとせず、ひとつだけ選んで数日続けてみてください。
1. 「できていること」を実況する
特別なごほうびは要りません。当たり前にできている場面に、言葉で気づいてあげるだけで十分です。
NG例:「早くしなさい」「なんでできないの」
OK例:「靴、自分で履けたね」「もう座れたんだ」
できていないことに目を向けている間は、褒める材料が見つかりません。まず「できている瞬間」を探す練習からです。
2. 指示は短く・具体的に・ひとつずつ
長い説明や複数の指示は、見通しを持ちにくい子には届きにくくなります。
NG例:「早く片付けて手を洗ってごはんだよ、何度言えば分かるの」
OK例:「まず、ブロックを箱に入れよう」(終わってから次を伝える)
3. 見過ごす行動をあらかじめ決めておく
すべてに反応すると、親のエネルギーが尽きてしまいます。危険や他人を傷つけることには必ず対応する。一方で、口答えや小さなぐずりなど「今日は反応しない」と決めた行動は、あえて注目を向けない。そして落ち着いた瞬間に「戻ってこられたね」と声をかけます。
ここで大切なのは、無視することが目的ではないという点です。注目を向ける先を、困った行動から望ましい行動へ移す。それがねらいです。
家庭でできる ペアトレの3ステップ
全部やらなくてOK。ひとつ選んで数日続けてみる
① できていることを
実況する
「靴、自分で履けたね」
「もう座れたんだ」
ごほうびは要りません
② 指示は短く
ひとつずつ
「まず、ブロックを
箱に入れよう」
終わってから次を伝える
③ 見過ごす行動を
決めておく
危険なことには必ず対応。
落ち着いたら声をかける
無視が目的ではありません
※「叱って減らす」より「できたことに注目して増やす」が土台の考え方です
どこで受けられる?探し方と続けるコツ
ペアトレは、市区町村の子育て支援・発達相談の窓口や保健センター、地域の発達支援センター、児童発達支援事業所、医療機関などで実施されていることがあります。名称は「ペアレントプログラム」「親の学習会」など地域によってさまざまで、対象年齢や費用、診断の要否も自治体によって差があります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口にててイください。
探すときは、「診断がなくても参加できますか」「何回コースですか」「きょうだいの預かりはありますか」の3点を最初に聞いておくと、続けられるかどうかを判断しやすくなります。実際、内容よりも「通い続けられるか」でつまずく方が多いからです。
そしてもうひとつ。ペアトレは一度学んで終わりではありません。学んだことを日常で試し、うまくいかない場面をまた持ち寄る。この往復があってこそ身についていきます。だからこそ、ひとりで抱えず、話せる相手がいる環境で続けることが大きな支えになります。
よくある質問
Q. 診断がないと受けられませんか?
A. 診断がなくても参加できるものが多くあります。ただし対象の考え方は実施機関によって異なるため、申し込み前に確認すると安心です。
Q. 何歳の子が対象ですか?
A. 幼児期から学齢期まで幅広く用意されています。年齢別にコースが分かれていることもあります。
Q. 父親や祖父母も参加できますか?
A. 参加できる場合が多いです。関わる大人の対応がそろうと、子どもは見通しを持ちやすくなります。
Q. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?
A. 個人差が大きく、すぐに変化を感じる方もいれば時間がかかる方もいます。子どもの変化より先に「親の気持ちが軽くなった」という変化が現れることも少なくありません。
まとめ
- ペアトレは親を正す場ではなく、関わり方の仕組みを学んで親がラクになるためのプログラムです。
- 家庭では「できていることを実況する」「指示は短くひとつずつ」「見過ごす行動を決める」の3つから。
- 窓口は市区町村。診断の要否や費用は地域差があるため、続けられる条件を先に確認しておくと安心です。
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この記事を書いた人
波多江 文永(はたえ あい)※活動ネーム
精神保健福祉士・特別支援教育士・スクールソーシャルワーカー。学校現場と発達支援の両方から、「診断がつかないけれど育てにくい」お子さんと親御さんをサポートしています。
この記事の関わり方を、
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