「うちの子の癇癪、ちょっと激しすぎる気がする」——子どもが寝たあと、スマホで検索してこのページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。ネットには「発達障害の可能性」という文字が並んでいて、余計に不安になったかもしれません。
この記事では、癇癪が「年齢によるもの」なのか「特性が関係しているかもしれない」のかを考えるための3つの視点と、迷ったときの相談の目安をお伝えします。先にお伝えしておくと、癇癪の強さだけで発達障害かどうかは判断できません。そして、どちらであっても、今日からできる関わり方はあります。
「ただの癇癪」と「特性による癇癪」は何が違うの?
まず前提として、癇癪そのものは発達の途中で誰にでも起こるものです。1歳半〜4歳ごろは「やりたいこと」と「できること」「言葉にできること」のあいだにギャップが大きく、その苦しさが泣き叫ぶ・寝転がるといった形で出てきます。いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる時期ですね。
一方で、特性が関係している場合、癇癪のきっかけや収まり方に少し違いが見えることがあります。たとえば、
- 感覚が過敏で、大人には気づけない音・光・肌ざわりが引き金になっている
- 先の見通しが立たないことへの不安が強く、予定変更でパニックになる
- 気持ちを言葉にする力がまだ育っておらず、行動でしか表現できない
つまり「わがまま」ではなく、その子なりに困っているサインが癇癪という形で出ているということです。
ここで、いちばんお伝えしたいことを書きます。お子さんの癇癪は、あなたの育て方のせいではありません。私はスクールソーシャルワーカーとして多くのご家庭に関わってきましたが、「自分の関わりが悪いのでは」と一番に自分を責めるのは、たいてい、いちばん丁寧に子育てをしている親御さんです。癇癪の背景には、その子の生まれ持った感じ方の違いがあります。原因探しよりも、「この子は何に困っているんだろう」と見方を変えるところから始めていいんです。
見分けるヒントになる3つの視点

ここからは、ご家庭で観察できる3つの視点をご紹介します。これは診断ではなく、「相談したほうがいいかな」を考えるための材料として使ってください。
視点1:年齢と癇癪の量が釣り合っているか
年齢が上がるにつれて、癇癪は少しずつ減っていくのが一般的です。5歳、6歳になっても頻度・強さがほとんど変わらない、あるいは増えているように感じる場合は、背景に別の要因があるかもしれません。
ただし、下のお子さんが生まれた、進級した、引っ越したなど、環境の変化があった時期は一時的に増えることもあります。「ここ数か月ずっと」なのか「最近の数週間だけ」なのかで分けて考えてみてください。
視点2:きっかけがパターン化していないか
これがいちばん実用的な視点です。1〜2週間、癇癪が起きた場面をスマホのメモに残してみてください。項目は3つだけで十分です。
- いつ(時間帯)
- どこで・何をしていたとき
- 何が変わった瞬間だったか
「遊びを中断させたとき」「予定が急に変わったとき」「大きな音がしたとき」など、きっかけが特定の場面に偏っているなら、それは特性由来の困りごとが隠れているサインかもしれません。逆に「眠いとき・お腹がすいたとき」に集中しているなら、生活リズムの調整で軽くなることも多いです。
このメモは、後で相談するときにそのまま資料になります。「なんとなく大変なんです」より「週に4回、遊びを終わらせるときに起きます」のほうが、相談先も具体的に動きやすくなります。
視点3:落ち着いたあと、切り替えられるか
癇癪のあと、抱っこや声かけで少しずつ落ち着いて、しばらくすると普段どおりに戻れるか。ここも大切な視点です。
反対に、なかなか切り替えられず1時間以上引きずる、自分を叩く・壁に頭をぶつけるなどの行動が出る、といった場合は、その子が自力で立て直す方法をまだ持てていない可能性があります。これは相談先に伝えるべき大事な情報です。
声かけは「NG例 → OK例」で
どの視点であっても、癇癪の最中の関わり方は共通しています。
NG例:「いい加減にしなさい!」「そんなことで泣かないの」
OK例:(そばで静かに待つ)→落ち着いてきたら「悲しかったね」「まだ遊びたかったんだね」
NG例:「約束したでしょ、なんで守れないの?」
OK例:「あと5回すべったら帰ろうね」(終わりを数で予告する)
癇癪の真っ最中は、脳が「話を聞ける状態」ではありません。説得も叱責も届かないので、安全を確保して待つのがいちばん効果的です。言葉をかけるのは、落ち着いてからで大丈夫です。
こんなときは相談を|相談先と伝え方

「診断がつくほどではないかもしれないし…」と相談をためらう方はとても多いです。でも、相談は診断を受けることとイコールではありません。「困っている」だけで十分な理由になります。
相談先の選択肢
- 市区町村の子育て支援センター・保健センター:いちばん身近で、予約なしで相談できるところもあります。まずここで大丈夫です。
- 発達障害者支援センター:各都道府県・指定都市に設置されています。診断がなくても相談できます。
- 通っている園・学校の担任、または巡回相談:家庭以外での様子を知っているのは先生方です。
- 児童発達支援・療育の相談窓口:利用には受給者証が必要ですが、相談自体は無料でできる自治体が多いです。
※制度の運用や窓口の名称は自治体によって異なります。詳しい窓口はお住まいの市区町村にご確認ください。
SSWとして見てきたこと
スクールソーシャルワーカーとして学校現場に入っていると、「もっと早く相談してよかった」という声を本当によく聞きます。多くの親御さんが「診断がついたらどうしよう」と身構えて相談を先延ばしにされるのですが、実際に相談してみると、必要だったのは診断名ではなく「園や学校とどう情報を共有するか」という橋渡しだった、というケースが少なくありません。
相談は、ラベルを貼りにいく場所ではなく、味方を増やしにいく場所です。動かなくても、話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなることもあります。
先生や相談員への伝え方
視点2でつけたメモがあれば、そのまま伝えるだけで十分です。
「最近こういう場面で切り替えが難しそうで、家では〇〇を試しています。園ではどうですか?」——このように「困っていること+すでにやっていること+質問」の形にすると、相手も答えやすくなります。
まとめ
- 癇癪の強さだけでは、発達障害かどうかは判断できません。大切なのは「その子が何に困っているか」です。
- 年齢との釣り合い・きっかけのパターン・落ち着いたあとの切り替え、この3つを1〜2週間メモしてみてください。
- 相談は診断を受けることではありません。「困っている」だけで、相談していい理由になります。
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この記事を書いた人
波多江 文永(はたえ あい)※活動ネーム
精神保健福祉士・特別支援教育士・スクールソーシャルワーカー。学校現場と発達支援の両方から、「診断がつかないけれど育てにくい」お子さんと親御さんをサポートしています。
ひとりで抱えなくて大丈夫です
「見分け方はわかったけれど、うちの子の場合はどうなんだろう」——そう思われたなら、それは自然なことです。同じ悩みを持つ親御さんと一緒に学べる場として、オンラインサロン「発達凸凹子育て実践ラボ」を運営しています。
ひとりで考え続けなくて大丈夫です。同じ夜を過ごしている仲間がいます。
